投稿者: 地域科学研究所
ゆふいんwakoya
蓋を開けた瞬間に甘い香りが広がり、手にした人が温かな気持ちに包まれる小さな幸せの詰め合わせ。華やかな赤色が目を引く真四角のBOXを隠れ家に、身を寄せ合うようにほのぼのと過ごす小鳥や猫、犬のかたちをした愛らしいクッキーは、由布院の小さな焼き菓子工房で1枚ずつ丁寧に手作りされています。お店の名前は『ゆふいんwakoya』。
オーナーである伊藤美羽子さんは、東日本大震災が起きた翌年2012年に三重県から大分県由布市へ移住し、2016年このまちにお店を構えました。
JR由布院駅から徒歩5分程の場所にありながらも、人通りの少ない場所にひっそりと佇む工房はどこか隠れ家のような雰囲気。けれどひとたび扉を開けると、甘く香ばしい香りに心が華やぎます。
子育てを通じて食の大切さに触れ、新天地となる由布院でさまざまな価値観に触れた伊藤さんがお菓子づくりにおいて大切にしているのは、まず1番に身体への優しさ。
動物性食材や白砂糖を使わず、クッキーの種類ごとにメイプルシロップや蜂蜜、米飴、花見糖(はなみとう)をはじめとする甘味などの素材を使い分け、多層的で深みのある味わいに仕上げます。また、wakoyaのおやつで忘れてはいけないのが、大分県産の地粉(小麦粉)と由布市育ちの地粉(米粉)の存在。大分の気候風土を活かして栽培された地粉はクッキーに個性を与えてくれるため、食べた人は地域の味わいを五感で感じることができるのです。
「小麦粉や米粉の産地が変わると、こんなにも焼き上がりの味わいが変わるのかと私自身も驚いています」と、笑顔で話す伊藤さん。
返礼品の中でも人気の高いクッキーの詰め合わせ「すこやか おやつ」缶は、伊藤さんのこだわりを思う存分に味わうことができます。ひとつの缶で楽しむことができるのは、口に運ぶのをためらってしまうほど愛らしい動物モチーフのクッキーのほか、大分県産地粉(小麦粉)に紅芋粉を混ぜた花型クッキー、オーガニックのココナッツフレークをふんだんに使用することでサクサクの食感を引き出し、焼き上がりにまぶしたヒマラヤ岩塩の塩味をアクセントにした米粉ココナッツサブレなど10種類以上。自分へのご褒美にはもちろん、大切な人へのギフトに喜ばれること請け合いです。
また、伊藤さんよりもうひとつのおすすめと教えてもらったこちらの商品、「豆乳いちごアイス」のチェックもお忘れなく。新鮮な由布市産いちごをたっぷり贅沢に使ったアイスは減農薬栽培の大豆の豊かなコク、豆乳ならではのすっきりとした後味を楽しむことができます。驚くことに伊藤さんが工房内で豆乳を手作りしているんですよ。
ひとつひとつ丁寧に作られた焼き菓子やアイスクリームは、小さなお子さまのおやつデビューにもぴったり。素材に気を配ったシンプルで優しい美味しさを、ぜひ大切な人と一緒に楽しんでみてください。
purify with.
いつか訪れてみたいと願う憧れの場所。記憶に残る懐かしい場所。あなたにとって由布院はどんな場所ですか? アロマ専門店『purify with.』は、大分県に滞在した際に感じた心地の良い感覚や美しい自然。まだ見ぬ土地の風景を投影させた香りなど、天然の精油から生まれた高品質のアイテムを届けています。
個性豊かなショップが軒を連ね、雑多で活気のある雰囲気が魅力のJR由布院駅前から続く由布見通り。多くの人々や多様な言語が行き交う通りを歩いていると、ふっと漂ってきた優しい香りに思わず足が止まります。その正体を突き止めるべく視線を泳がせ、慎重に辺りを見渡しながらゆっくりと再び足を前へ…。すると通りの喧騒を感じさせない、グレイッシュなトーンの内装が美しく、美術館のようなアロマショップにたどり着きました。
優しい笑顔で出迎えてくれたのは、店長の浅香遙さん。
店内に並ぶ商品は全て専属の調香師が天然の精油を巧みに組み合わせ、商品化まで一貫して行ったオリジナルアイテムだそうです。さらに驚いたのは、調香の舞台がこの店舗内に併設された工房であるということ。
合成香料や保存料は一切使用せず、調香師が繰り返し行う自然との創造的な駆け引きの拠点がこの場所だとは考えもしませんでした。
気になる商品はインテリアとしても活躍するディフューザーと、携帯に便利なスプレーの2パターンがあり、返礼品で紹介されている香りは全8種類。その中でもおすすめは、大分や由布院の色彩や空気、気配を天然精油でデザインした4種類だと浅香さんは話します。
まずは、穏やかな風に吹かれつつ辻馬車に乗り、由布岳を背景に広がる美しい里山の風景に心癒される…という観光のワンシーンを連想させる温かみのある香りの「風靡(fuubi)」。
次は和の香りであるヒノキをメインに、西洋ヒノキのサイプレス、オレンジ、ラベンダーなどを配合した、穏やかな森の香りを連想させる「朝霧(asagiri)」。その名の通り由布院盆地をすっぽりと包み込む幻想的な朝霧の光景をイメージしています。
心地良い秋風に包まれた由布院の夜景を香りに投影させた「月白(geppaku)」は、甘く透明感のあるクチナシをメインで配合。リフレッシュしたいときや気持ちを前向きにしたいときにぴったりな1本です。
そして最後に紹介するのが、大分県の特産品であるカボスを中心に、ラベンダーやベルガモット、レモンなどを合わせた「翠水(suisui)」。個性的で爽やかなブレンドがストレスを柔らげ、明るい気持ちにさせてくれます。
自然そのものの繊細な香りを楽しめることはもちろん、その先に待つ“癒し”も天然精油ならではの魅力。消臭や虫除け、空気清浄にも使えるなど様々な場面で活躍するアイテムは、世代を問わず贈り物としても喜ばれています。
由布院 ときの色
JR由布院駅から続く由布見通り沿いに佇み、軒を連ねる数々の土産店や飲食店の中でもカラフルなロゴが一際目を引く『ときの色』。2017年にオープンしたこちらのお店は、由布院温泉旅館組合前事務局長の経歴を持つオーナーが手がけるガトーショコラ専門店です。
明るい陽光が差し込む店内に一歩足を踏み入れると、ガラスケースの中には色や形の個性豊かなガトーショコラがずらり。その奥で清潔な制服に身を包み、商品を愛おしそうに見つめていた男性がオーナーの安部順一さんです。
観光という視点から長年に渡って由布市を盛り上げ、多くの人々との絆を深めてきた安部さんがなぜ食の世界へ?そして、たどり着いた先もなぜ、ガトーショコラだったのでしょうか。
安部さんに疑問をぶつけてみると、実は前職の時代から“自らの手で生み出したもので観光者と直接のコミュニケーションを図り、地域の魅力を伝えていきたい”という思いを抱いていたと語ります。
そして仕事の軸足をいかに移すべきか方法を模索していたとき、偶然出会ったスイーツが一切れのガトーショコラ。料理人の友人と由布院について語り合っていた際、たまたま分けてもらったチョコレート菓子を手にした瞬間、目の前に悠然と佇む由布岳とのコラボレーションを思いついたのだと言うのです。
ガトーショコラのチョコレート色を目にした際に頭に浮かんだのは、枯れ草に火をつけると炎が山肌を駆け抜け、パチパチと音を立てながら辺りを黒く染める野焼きの風景。そこから安部さんの修行の日々は始まり、ついに完成したのが西峰・東峰の2つの頂上を持つ双耳峰の活火山であり、その美しく荘厳な姿から“豊後富士”とも呼ばれる由布岳をイメージしたガトーショコラでした。
さらに「華やかな温泉観光地の舞台裏には、必ず生産者や料理人の姿がある」、と安部さんは話を続けます。現在も地域には多くの農村風景が残っていることから、商品には地元産の米粉を採用。清らかな水と高原の寒暖差で旨味を増した湯布院米による商品は、グルテンフリーのおやつとしても注目を集めています。
特におすすめなのは、一口食べた瞬間から優雅な茶葉の風味が心を満たしてくれる3種類の味比べが楽しめる「和っ茶ショコラセット」です。和紅茶、ほうじ茶、福岡県八女市産の抹茶それぞれとホワイトチョコレートを組み合わせたガトーショコラは、移りゆく由布岳の四季の色をイメージしています。山肌を染める若草色が映える春から夏にかけての由布岳、暖色系にそまり温もりが感じられる秋深まった由布岳。
シンプルなビジュアルの中にこだわりを詰め、丁寧に焼き上げたスイーツは、由布院の旅への想いを高めてくれるはずです。
こちょぱん
温泉観光地として栄える由布院の賑やかなメインストリート・湯の坪街道とは異なり、ゆるりとした時間が流れる“花の木通り商店街”。地域とともに変わりゆく時代を生き、変遷を見守ってきた昔ながらの通りには、2011年の開店以来、地域の人々に愛されるパン屋さんの姿があります。
家族の朝ごはんや子どものおやつ、久しぶりに再会する友へのおもてなしに。
商店街の一角で営業する『こちょぱん』には、地域の方々からお母さんと一緒に手を繋いでやってくる小さな子ども、ビジネスマンまで、幅広い世代のお客さんが日々そのドアを開きます。
そして愛らしくユニークな店の名前は、意外にもオーナーである里見真由美さんの旧姓“古長(こちょう)”に由来しているとのこと。
「“こちょうのパン”だから“こちょぱん”。肩肘を張らずに私らしく、子どもでも読める店名にしたかったので決めてしまいました(笑)」。そう話して穏やかに笑う里見さんは生き生きとした明るい笑顔が印象的な女性で、東京のベーカリーで修行を重ねた後に生まれ故郷である由布院に店を構えました。
そして開店からしばらく経った頃に誕生したのが、返礼品として全国に届けている「おんせんベーグル」です。国産小麦や国産大豆をはじめとする材料を厳選し、独自の製法で仕込んだ生地を、焼き上げる直前に温泉に浸からせた人気商品は、温泉効果により食べ心地はしっとり。冷めたままでももちもちとした食感を楽しめ、一般的なハードタイプのベーグルとは異なる味わいに仕上がっています。
商品が誕生したきっかけは、観光でこの地を訪れた人々に “由布院らしいパンを届けたい”と考えたことから。「地域密着型のパン屋であっても、土地柄、旅行者のお客様も多く来店します。けれど以前は地域の特色を活かした商品は販売していなくて。遠方から来てくれた人々に喜んでもらうためには、お店の顔となる名物パンを作る必要があると思いました」。
試行錯誤の末にひらめいたのが、以前からファンの多かったベーグルの製造過程に温泉水を用いてみること。源泉数は約900、湧出量全国第3位を誇る由布院温泉は、名峰・由布岳の麓のいたるところから天然の湯が湧いているため、里見さんも幼い頃から天然の湯に親しんできたと言います。
そして里見さんが試しにベーグルを温泉で茹でてみると、驚くほどに生地が艶めき食感はもっちり! 密度の高い、ギュッと目の詰まった生地のオリジナル商品が完成したのです。
プレーンのほか、抹茶あずきやくるみ、チョコ、クリームチーズクランベリーなど、バラエティに富んだ味わいも人気の理由。温泉の恵みがもたらした美味しい幸せが噛むほどに滲む、湯のまちのベーグルをぜひお試しください。
※おんせんベーグルは由布院の温泉を使用し、水質については第三者機関にて検査し安全を確認しております。また、使用に関しては保健所より許可をいただいています。
草庵秋桜 四季工房
ガラス瓶の中で野菜や果物が宝石のようにきらめくピクルスは、食べずにそのまま飾っておきたくなるほどの愛らしさ。けれど素材本来の美味しさをそのまま閉じ込めた商品は、キュートな見た目に反して栄養価も抜群です。由布院土産としても人気を集める、こだわりの専門店を訪ねました。
採れたての野菜や果物のみずみずしさを、そのままぎゅっと1本のガラス瓶に詰めた人気者を求め、由布院観光のメインストリート・湯の坪街道へ。カフェのようなショップに到着すると、店内には種類豊富なピクルスがずらりと並び、瓶の表面にはカラフルな素材がゴロゴロと覗きます。
目移りするラインナップに心奪われていると、やはり気になるのは由布院ピクルスが生まれた理由。工場長の岩本真弓さんにお話を伺うと、商品が誕生した背景には、ショップの運営元である温泉宿『草庵秋桜』の強い想いがあることがわかりました。
それは1987年の創業以来、“料理の美味しい宿”として親しまれる宿ならではの愛。
お客様に地の食材を使った美味しい食事を提供できるのは、どんなときも自然と向き合い、農に従事してきた人々の存在があってこそ。それならば宿が生産者の生活を支えるべきだと考え、ピクルス用の食材を彼らから買い取ることにしたのだそうです。
そして2015年に店舗をオープン。月日の経過とともにショップの認知度も高まった現在は、移り変わる気候や在庫の関係もあり、全ての商品に由布院の食材を使用できていませんが、生産者の方々への感謝の気持ちは変わらず、できる限り大分の食材の使用を心がけていると言います。
返礼品の中でも岩本さんのおすすめは、食べ比べセットの中で楽しめる「タケノコ・フキ・ワラビのピクルス」。これら3つの山菜は全て地元の山で採られたもので、独特の苦味のある春の味は、山や集落のことを知り尽くした名人にしか収穫することはできません。
「体力と経験の必要な山菜採りを行う方は年々少なくなっています。高齢化も進んでいるので、今は山菜を届けていただく度に感謝の気持ちで胸が一杯になります。だからこそ、1人でも多くの人にこの味を知ってもらえたら嬉しいですね。生産者の皆さんにとっても、それが1番のやりがいに繋がるはずですから」。
口に含むとシャキシャキとした食感とともに、山菜特有のほのかな苦味を含んだ香りが鼻を抜けていく大人味のピクルス。お酢に含まれる有機成分によりクエン酸回路が活発になり、代謝アップや疲労回復、スタミナアップの効果も期待できるそうですよ。